この記事でわかること
- 人工授精の仕組みと、タイミング法・体外受精との違い
- 排卵確認、精液採取、精子処理、注入、妊娠判定までの一般的な流れ
- 痛みや負担、続け方や別の治療を相談するときの確認事項
人工授精を考えるときの結論
人工授精を行うか、何周期続けるかに、全員共通の答えはありません。
排卵の状態、卵管や子宮の確認、精液所見、これまでの治療経過などを踏まえ、人工授精が現在の状況に合うかを相談します。薬を併用するか、続けるか、別の治療を考えるかも、年齢や回数だけで決めず、身体的・心理的・時間的な負担と希望を含めて判断します。
人工授精(AIH)とは
人工授精は、採取した精液を処理し、排卵時期に合わせて細い器具で精子を子宮内へ注入する方法です。精子と卵子が出会って受精する過程は体内で起こるため、体外で卵子と精子を受精させる体外受精とは工程が異なります。
精液処理では、精子以外の成分などを取り除き、運動する精子を回収・濃縮した精子浮遊液を用います。処理方法や処理後の所見は医療機関と検体の状態によって異なるため、個別の結果は実施施設で確認します。
タイミング法・体外受精との違い
3つの治療は、精子と卵子が出会うまでの工程が異なります。治療名の順番が、そのまま全員に共通する優劣や必須の進み方を示すものではありません。
タイミング法では性交時期を相談し、人工授精では処理した精子を子宮内へ注入します。体外受精は採卵し、体外で受精工程を行います。どの方法を検討するかは、検査結果とこれまでの経過を踏まえて相談します。
人工授精を検討する場面
人工授精は、精液所見、性交や射精の難しさ、原因が特定できない不妊などで選択肢になることがあります。ただし、診断名だけで自動的に決まるものではなく、卵管の状態や排卵の有無、女性側・男性側の検査結果も確認して検討します。
自然な排卵に合わせる場合と、薬を用いて排卵を調整・促す場合があります。薬の必要性や方法は一律ではなく、期待される効果だけでなく、多胎妊娠や卵巣への反応なども含めた説明を受けて判断します。
事前に確認する検査と情報
人工授精の前には、現在までに何を調べ、どの結果が方針に関わるかを整理します。次は主な確認事項であり、全員が同じ検査を同じ順序で受けるという意味ではありません。
- 排卵の状況
- 月経周期や診察所見から排卵時期を考え、必要に応じて超音波検査やホルモンの確認を行います。
- 卵管・子宮の情報
- 精子と卵子が体内で出会う経路を考えるため、これまでの検査結果や病歴を確認します。
- 精液所見
- 採取した精液の所見は変動することがあるため、検査結果と当日の状態を方針の材料にします。
- 双方の病歴と治療歴
- 服用中の薬、既往歴、これまでの治療と負担、希望を共有します。
排卵確認から妊娠判定までの一般的な流れ
次の図は一般的な流れです。受診日、採取方法、精子処理にかかる時間、実施後の案内、妊娠判定の時期は医療機関と診療計画によって異なります。
事前に、月経開始後の連絡方法、精液の採取場所と持参条件、当日の待ち時間、帰宅後の案内を受診先へ確認しておくと、当日の予定を立てやすくなります。
排卵時期の確認
月経周期や診察所見をもとに実施時期を検討します。超音波検査、尿や血液によるホルモンの確認などを組み合わせる場合がありますが、確認方法は全員同じではありません。
精液採取と精子処理
指定された方法で精液を採取し、医療機関で洗浄・濃縮などの処理を行います。院内採取か自宅採取か、容器、持参可能時間、禁欲期間などは施設ごとに異なるため、事前確認が必要です。
子宮内への注入
処理した精子浮遊液を、細い器具で子宮内へ注入します。実施前後の診察や薬の使用は、周期と診療計画によって異なります。
実施後と妊娠判定
実施後の過ごし方と、次回受診や妊娠判定の時期について案内を受けます。自己判断で判定時期を早めたり薬を中止したりせず、受診先の指示を確認します。
痛み・身体的負担と実施後の注意
器具を子宮内へ挿入する際の感じ方には個人差があります。出血、痛み、感染などが起こる可能性はありますが、「必ず痛い」「痛くない」と一律には言えません。処置前に、過去の診察で痛みが強かったことや不安があることを伝えてください。
実施後は、受診先から説明された生活上の注意と連絡方法を確認します。痛みや出血など気になる変化がある場合に、どの症状で、いつ、どこへ連絡するかを処置当日に聞いておくと安心です。本記事では、院別に確認されていない緊急受診の閾値を示していません。
通院・費用・保険について確認すること
人工授精に関する診療には、保険診療の対象になり得る部分があります。ただし、診察、検査、薬、処置の組み合わせや施設基準によって確認事項が異なります。制度の概要だけで自己負担額を決めつけず、治療計画を聞いたうえで受診先へ確認してください。
- 周期中に何回程度の受診を想定し、変更時はどのように連絡するか
- 診察、検査、薬、人工授精のうち、今回の計画に含まれる項目
- 保険診療と自費診療が混在する可能性、および事前説明の方法
- 精液採取から処置終了までに必要な時間と、パートナーの予定
本記事では、確認できていない院別費用や一律の自己負担額を掲載していません。
続け方や次の治療を相談するとき
妊娠に至らない場合も、人工授精の回数だけで理由を判断することはできません。排卵、卵管、子宮、精液の検査結果、治療中の所見、年齢、これまでの期間、通院や処置の負担、希望を整理します。
人工授精を続ける、診察や検査を見直す、別の治療について説明を受けるなど、相談の方向は一つではありません。体外受精を含む次の選択肢も、固定回数や年齢だけで決めず、現在の状況に合わせて検討します。
よくある質問
人工授精は痛いですか?
感じ方には個人差があります。器具の挿入に伴う痛みや出血などが起こる可能性はあるため、不安や過去に痛みが強かった経験を処置前に伝え、実施後の連絡方法も確認してください。
精液はどこで採取しますか?
院内採取か自宅採取か、持参できる時間、容器などは医療機関によって異なります。予約時または診療計画の説明時に、本人確認を含む受診先の手順を確認してください。
実施後は普段どおり生活できますか?
処置当日の過ごし方や薬の使用は診療計画によって異なります。受診先から受けた説明に従い、気になる症状がある場合の連絡先と連絡目安を確認してください。
何回行ったら次の治療へ進みますか?
人工授精の回数だけでは決まりません。双方の検査結果、年齢、これまでの経過、治療中の所見、通院や処置の負担、希望を整理し、続け方や別の治療を相談します。
参考文献
- 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023 CQ325日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会
- 不妊症日本産科婦人科学会
- 不妊治療に関する取組厚生労働省
- Evidence-based treatments for couples with unexplained infertilityAmerican Society for Reproductive Medicine


