男性不妊とは?検査・原因と夫婦で進める受診の流れ

男性側の要因は、外見や自覚症状、セルフチェックだけでは判断できません。精液検査などの結果と既往歴、使用中の薬、身体所見等を確認し、女性側の評価と並行して方針を相談します。

長谷川 朋也 医師

この記事の医師監修

長谷川 朋也長谷川レディースクリニックグループ 統括院長

医学博士/日本専門医機構認定 産婦人科専門医・指導医/日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医

神奈川県相模原市出身。東京医科大学卒業。厚生中央病院、東京医科大学産科婦人科学分野(杉山産婦人科、東京医大八王子医療センターなど)、ハーバード大学ポストドクトラルフェロー、東京医科大学病院リプロダクションセンターを経て現職。

医師確認日

男性本人が検査や治療について医療者へ質問する編集イラスト

この記事でわかること

  • 男性側と女性側の評価を並行して進める理由
  • 精液検査で確認できることと、その限界
  • 結果後に追加評価や治療を相談するときの考え方

男性側の確認を始めるときの結論

精液検査の一つの項目や一回の結果だけで、自然妊娠の可能性や治療方法が決まるわけではありません。

妊活期間、既往歴、薬剤、診察、女性側の検査情報などを合わせ、必要な評価と次の方針を医療機関へ相談します。

男性不妊とは

男性不妊は、妊娠に至らない背景について男性側の要因を評価する領域です。男性側だけの責任として考えるのではなく、女性側の情報と並行して確認します。

外見や自覚症状だけでは判断できず、検査を行っても原因を特定できない場合があります。生活上の行動や本人の努力だけに原因を求めるものでもありません。

女性側と男性側を並行して確認する理由

一方の検査がすべて終わるまで必ず待つのではなく、女性側・男性側の情報を並行して整理することで、妊活期間や治療歴、年齢、検査結果、希望、身体的・心理的・時間的な負担を合わせて相談できます。

女性側と男性側を並行して確認する流れ
妊娠と治療歴を整理し、女性側と男性側を並行して評価し、双方の結果と希望や負担を共有して次の方針を相談する。
妊娠・治療歴の整理
女性側の評価
検査・治療歴
男性側の評価
問診・検査
双方の結果を確認
希望・負担を共有
次の方針を相談
女性側と男性側の情報を並行して確認する流れ

どちらか一方を原因と決める図ではありません。双方の情報を確認し、本人・パートナーが共有できる範囲と医療機関での扱いを相談します。

男女双方の不妊検査の全体像を見る

男性不妊で確認する主な原因

原因は一つの特徴から自己判断せず、次のような大分類を問診、検査、診察などで確認します。

精子の産生・通過
精子をつくる過程や、精子の通り道に関する要因を確認します。
身体・全身の背景
ホルモン、遺伝的背景、陰嚢内の所見、感染・炎症、全身疾患などを確認します。
性機能・薬剤など
射精や性機能の困りごと、使用中の薬、外因性ホルモンなどを確認します。
特定できない場合
必要な評価を行っても、原因を特定できない場合があります。

一つの既往、検査所見、生活習慣だけで原因や治療の必要性を決めるものではありません。

初診前に整理する情報

分かる範囲で、次の情報を医師へ伝える準備をします。答えにくい内容は、相談できる範囲から伝えて構いません。

  • 妊活期間、過去の妊娠歴・治療歴
  • 小児期・思春期の病気、停留精巣を指摘された経験
  • 鼠径部、陰嚢、骨盤内などの手術歴、外傷、感染症、発熱歴
  • 射精・性機能に関する困りごと
  • 使用中の薬、テストステロン製剤、アナボリックステロイド
  • 喫煙、飲酒、高温環境、職業上の曝露、家族歴、全身疾患

薬剤やホルモン製剤は自己判断で中止・変更せず、使用目的と製品情報を医師へ伝えます。

精液検査で確認すること

精液検査は男性側の初期評価で用いられ、精液量、精子濃度、総精子数、運動に関する項目、形態などを確認します。必要に応じて、その他の項目も評価されます。

濃度と総精子数は同じ指標ではありません。複数の項目を、検査室や測定方法などの評価条件、問診や診察の情報と合わせて確認します。本記事では固定の参照値や数値表を掲載していません。

精液検査だけでは分からないこと

  • 一つの項目だけで妊孕性を判断することはできません。
  • 一回の検査だけで男性側の状態全体を判断することはできません。
  • 参照値は妊孕性と不妊を二分する診断境界ではありません。
  • 参照値を下回る結果だけで自然妊娠が不可能とは断定できません。
  • 参照値を上回る結果も妊娠に至ることを約束するものではありません。
  • 精液所見だけで原因の場所や治療方法を決めることはできません。

市販検査や自宅での観察は、医療機関で行う検査、診察、結果説明の代替にはなりません。

結果が変動する理由と再検査

精液所見は、採取条件、体調、発熱、検査条件などの影響を受けて変動することがあります。初回結果や臨床状況に応じ、医療機関から再検査を案内される場合があります。

再検査の要否と時期、採取場所、容器、持参方法などは医療機関へ確認してください。採取条件や結果表の詳しい読み方は、精液検査を扱う独立テーマとして整理予定です。本記事では検査の目的と限界に留めています。

精液検査以外の評価と専門医への相談

状況に応じて、問診、身体診察、精巣・陰嚢などの診察、超音波検査、ホルモン検査、尿検査、感染症に関する検査、遺伝学的検査などが検討される場合があります。

男性側の評価の全体像
問診と既往歴、精液検査、身体診察、必要に応じた追加検査を合わせ、結果を総合して専門相談を検討する。
問診・既往歴
薬剤・生活情報
精液検査
複数項目を確認
身体診察
所見を確認
必要に応じた追加検査
結果を総合
一項目で決めない
専門相談を検討
男性側の情報を総合して専門相談を検討する流れ

すべての人へ同じ検査を行うという意味ではありません。精液検査の結果、既往歴、診察所見などから、必要な評価と泌尿器科・男性不妊専門医への相談を検討します。

無精子症や射精の悩みを指摘されたとき

精液検査で精子が確認されない場合

精液の外見では判断できません。精液検査で精子が確認されない場合は、再確認や、問診、診察、ホルモン、遺伝などの追加評価、泌尿器科・男性不妊専門医への相談が検討される場合があります。本記事では詳しい分類や治療方法を扱いません。

射精・性機能に関する困りごと

射精や性機能に関する困りごとも相談理由になります。勃起機能と射精機能は同じではなく、薬剤、神経、心理、身体的な背景などが関係する場合があります。詳細な分類や治療を自己判断せず、泌尿器科などへの相談を検討します。

結果後に相談する治療・生殖補助医療

結果後は、原因や背景に応じた対応、薬剤・ホルモンに関する治療、精索静脈瘤などへの手術、感染・炎症や射精・性機能への対応、精子採取、経過観察、専門医紹介などを相談する場合があります。

結果後に相談する選択肢
原因や背景に応じた対応、専門医紹介、人工授精、体外受精、顕微授精を選択肢として整理し、継続や変更を相談する。
原因・背景に応じた対応
専門医への紹介
人工授精を相談
体外受精を相談
顕微授精を相談
継続・変更を相談
結果と希望を合わせて治療・生殖補助医療を相談する流れ

精液検査の数値だけで治療を自動選択する図ではありません。検査と診察、女性側の情報、希望と負担を合わせて相談します。

生活習慣情報の受け止め方

喫煙、飲酒、体重、運動、睡眠、発熱、高温環境、職業上の曝露、使用中の薬は、問診時に伝える情報です。これらを禁止事項の一覧にしたり、本人の責任にしたり、一つの変更で精液所見や妊娠・出生結果が改善すると保証したりはできません。

サウナを一律に禁止するのではなく、利用状況や高温環境への曝露を医師へ伝えます。サプリメントも精液所見と妊娠・出生結果を分けて考え、標準的な評価や治療の代替にしません。本記事では商品、成分、用量を推奨していません。

一人で相談する場合・パートナーと相談する場合

男性一人で相談する場合も、パートナーと情報を整理する場合もあります。実際の受診可否や予約方法は医療機関ごとに確認してください。

妊娠歴、治療歴、検査結果、希望、負担を共有できる範囲で整理します。パートナーの個人情報や検査情報の共有方法も医療機関へ確認し、どちらか一方が受診しないことを責めないことが大切です。

よくある質問

男性不妊は見た目や自覚症状で分かりますか?

外見や自覚症状だけでは判断できません。既往歴、精液検査、必要に応じた診察や追加評価を合わせて確認します。

精液検査は一回だけで判断できますか?

精液所見は採取条件や体調などで変動する場合があります。初回結果と臨床状況に応じた再検査の要否・時期を医療機関へ確認します。

精液検査の結果が参照値を下回ると自然妊娠できませんか?

参照値は妊孕性と不妊を分ける診断境界ではありません。一つの結果だけで自然妊娠の可否を断定することはできません。

男性一人でも相談できますか?

男性一人で相談する場合もありますが、実際の受診可否や予約方法は医療機関ごとに異なります。パートナーの情報をどう共有するかも確認してください。

生活習慣を変えれば精液所見は改善しますか?

一つの生活習慣変更による改善は保証できません。生活情報を医師へ伝え、検査や標準的な評価・治療を遅らせないことが重要です。

精液検査の結果だけで人工授精や顕微授精が決まりますか?

決まりません。女性側の情報、既往歴、診察、治療歴、希望と負担などを合わせ、治療や専門相談の必要性を検討します。

参考文献

  1. 日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン 2024年版」
  2. 日本泌尿器科学会「男性不妊症」
  3. こども家庭庁「男性不妊」
  4. こども家庭庁「検査・治療について」
  5. WHO, Laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed.
  6. WHO, Guideline for the prevention, diagnosis and treatment of infertility (2025)
  7. EAU Guidelines, Male Infertility (2026)

WHO・EAU資料は医学的説明の補足として参照し、日本の保険制度や各施設の運用を決める根拠にはしていません。

不妊治療ガイドの記事一覧を見る

更新日医師確認日