この記事でわかること
- 一般不妊治療と生殖補助医療の保険上の条件
- 保険診療・自費診療・先進医療、高額療養費、医療費控除の違い
- 見積もりや自治体制度について確認する項目と確認先
不妊治療の費用を考えるときの結論
不妊治療の費用は、治療内容だけでなく、保険診療、自費診療、先進医療の区分と、検査・薬剤・処置・培養・保存などの内訳によって変わります。総額を決めつけず、制度条件と見積もりの範囲を分けて確認します。
治療名だけでは、実際の支払額は決まりません。
同じ治療でも、診察・検査・薬剤・処置の内容、保険適用の条件、先進医療や自費診療の選択、凍結・保存などの継続費用によって内訳が変わります。治療計画を確認したうえで、どの項目が保険、自費、先進医療に当たるか、追加費用が生じる条件は何かを医療機関へ確認してください。
本記事は制度の共通入口であり、個別の見積書や院別料金表の代わりではありません。3医院の未確認料金・診療範囲・先進医療は掲載していません。
費用は治療内容と制度区分で変わる
費用を整理するときは、最初に「何の費用か」と「どの制度区分か」を分けます。窓口で支払う金額には、診察や検査だけでなく、薬剤、処置、培養、凍結・保存、証明書などが関係することがあります。
図の項目がすべての人に発生するわけではありません。治療計画と見積もりを照らし合わせ、今回含まれる項目と、後から発生し得る項目を確認します。
保険適用される治療の全体像
2022年4月から、有効性・安全性が確認された一般不妊治療と生殖補助医療の基本的な診療が保険適用となりました。ただし、すべての検査、薬、追加技術が保険対象になるという意味ではありません。
タイミング法と人工授精は一般不妊治療に含まれ、公的な患者向け資料では制度上の年齢・回数制限はないと案内されています。一方、治療を医学的に続けるか、別の選択肢を考えるかは、制度上の制限とは別に検査結果や経過を踏まえて相談します。
生殖補助医療の年齢・回数条件
保険診療として行う生殖補助医療には、女性の年齢と胚移植回数の条件があります。これは保険診療の条件であり、自費診療を含むすべての治療を禁止する条件ではありません。
- 治療開始日の年齢
- 女性が43歳未満であることが条件です。「治療開始日」が具体的にいつに当たるかは、治療計画を作成する医療機関へ確認します。
- 40歳未満で治療計画を作成
- 初めて胚移植に向けた治療計画を作成した日の年齢が40歳未満の場合、胚移植は1子ごと6回までと案内されています。
- 40歳以上43歳未満で治療計画を作成
- 同日の年齢が40歳以上43歳未満の場合、胚移植は1子ごと3回までと案内されています。
数えるのは採卵回数ではなく胚移植回数です。出産、または妊娠12週以降の死産後に次の子を希望する治療では、公的資料上、回数を改めて数える扱いが案内されています。個別の適用や必要な記録は、医療機関と加入保険者へ確認してください。
保険診療・自費診療・先進医療の違い
保険診療と保険外診療の併用は原則として制限されています。一方、厚生労働大臣が定める先進医療は、要件を満たす医療機関で保険診療と併用できます。
先進医療の技術料は全額自己負担で、共通する保険診療部分には保険給付が適用されます。先進医療だから治療として優れている、またはすべての医療機関で受けられるという意味ではありません。技術ごとの実施施設は厚生労働省の一覧と受診先で確認します。
治療段階ごとに確認する費用項目
次の項目は見積もりを読むための分類です。実施する診療や費用は一律ではなく、院別金額も示していません。
初診・検査・一般不妊治療
初診・再診、超音波、血液・ホルモン検査、卵管や精液の検査、薬剤、タイミング法や人工授精に伴う診療を確認します。どの検査を行うかは診察所見と既往歴などで異なります。
採卵・受精・培養
生殖補助医療では、診察・薬剤に加え、採卵、受精、顕微授精、培養、胚盤胞培養など、実際に行う工程を確認します。採取数や培養経過などにより項目が変わることがあります。
胚移植・凍結・保存
胚移植、凍結、保存、保存期間の更新などを分けて確認します。治療周期内の費用と、後日継続して発生する費用を区別します。
薬剤・追加検査・証明書
院外薬局を含む薬剤、追加検査、自治体や保険者へ提出する証明書、キャンセル時の扱いなども、見積もりに含まれるかを確認します。
高額療養費を確認するとき
高額療養費は、保険診療の自己負担が暦月単位で、年齢・所得区分などに応じた上限を超えた場合に適用される制度です。月をまたぐと別の月として計算されます。直近12か月に該当した月が3か月以上ある場合、4か月目以降に多数回該当の上限が適用される仕組みがあります。
マイナ保険証によるオンライン資格確認、または限度額適用認定証により、窓口負担を上限までにできる場合があります。先進医療の技術料、自費診療、差額ベッド代などは対象外です。加入保険者と医療機関へ確認してください。
医療費控除を確認するとき
医師による不妊治療や人工授精の費用は、医療費控除の対象になり得ます。自己または生計を一にする配偶者・親族分を、その年に実際に支払った額で集計し、保険金や高額療養費などの補填額を差し引いて計算します。
支払額が一定額を超えても、還付されるとは限りません。総所得金額等が一定額未満の場合は別の基準があり、医療費控除は所得控除です。通常必要な電車・バス等の通院交通費は対象になり得ますが、自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外です。セルフメディケーション税制とは選択適用で、併用できません。
個々の支出の該当性と当該年の手続は、国税庁・税務署の最新情報で確認してください。
自治体助成を探すとき
自治体の制度は、居住地、治療開始日、治療区分、年齢、申請期限、対象医療機関などで条件が異なります。東京都、神奈川県、港区、相模原市などの公式ページは確認先の例であり、全国共通の制度ではありません。
- 住民票のある自治体と申請窓口
- 治療開始日・治療区分・年齢の条件
- 対象医療機関と対象になる費用
- 申請期限と必要書類・医療機関証明書
- 高額療養費や他自治体助成との調整
今回の確認で制度を見つけられなかった自治体について、制度がないとは断定できません。自治体の担当窓口へ確認してください。
見積もりで医療機関へ確認すること
制度の説明だけで自己負担額を決めず、治療計画と見積もりを一緒に確認します。
今回行う診療、保険・自費・先進医療の区分、見積もりに含まれる項目、追加費用が生じる条件、支援制度の期限を順に確認します。
- 今回の治療計画に含まれる診察・検査・薬剤・処置
- 保険、自費、先進医療の区分と説明書
- 見積もりに含まれない項目と追加費用が生じる条件
- 凍結・保存・更新など後日発生する費用
- 証明書、支払い、問い合わせ方法
実際の費用、保険・自費の区分、追加費用、対応する治療は医療機関ごとに確認してください。本記事では3医院の料金、診療範囲、先進医療、支払方法を掲載していません。
よくある質問
タイミング法や人工授精にも年齢・回数制限がありますか?
公的な患者向け資料では、一般不妊治療に制度上の年齢・回数制限はないと案内されています。ただし、医学的に継続するかどうかは検査結果や経過を踏まえて相談します。
体外受精の回数制限は採卵回数ですか?
保険診療の回数条件で数えるのは胚移植回数です。治療計画を作成した日の年齢区分と個別の適用は、医療機関と加入保険者へ確認してください。
保険診療と自費診療を同じ周期で組み合わせられますか?
保険診療と保険外診療の併用は原則として制限されます。先進医療など併用できる制度もあるため、治療計画ごとに区分を確認してください。
先進医療費は高額療養費の対象ですか?
先進医療の技術料は高額療養費の対象外です。共通する保険診療部分の自己負担は対象になり得ます。
不妊治療費は医療費控除の対象ですか?
医師による不妊治療・人工授精費用は対象になり得ます。補填額や所得による計算、個別支出の扱いは国税庁・税務署の最新情報を確認してください。
自治体制度や見積もりは何を確認しますか?
居住自治体、治療開始日、申請期限、必要書類を確認します。見積もりでは保険・自費区分、含まれる項目、追加費用、保存・更新費用を医療機関へ確認してください。
参考文献
- 保険適用についてこども家庭庁
- 保険診療の基礎知識こども家庭庁
- 不妊治療に関する取組厚生労働省
- 先進医療の概要厚生労働省
- 高額療養費制度を利用される皆さまへ厚生労働省
- No.1120 医療費を支払ったとき国税庁
- 東京都不妊治療費助成事業の概要東京都福祉局


